
平和な世の中なら農耕に使われる馬が、戦時中には軍用馬となり、全く違う使われ方になります。なぜこのような違いが生ずるのか。満足を知らない誰かのもっともっと得たいという強欲によって、戦争のようなわざわいが引き起こされる。だから強欲より大きな罪はない。「足るを知る」で、これでもう十分だと、そう思えればいつでも十分だと老子は説いています。
The Great Sin of Never Being Satisfied
In a peaceful world, horses are used for farming, but in times of war, they become military horses and are used in completely different ways. Why does this difference arise? It is caused by the insatiable greed of those who always want more and more, bringing about calamities such as war. Therefore, there is no greater sin than greed. Laozi teaches that by “knowing what is enough,” if one can truly feel that “this is enough,” then it will always be enough.
漢文・書き下し文と現代語訳
天下有道、却走馬以糞、天下無道、戎馬生於郊。
天下(てんか)に道(みち)有(あ)れば、走馬(そうば)を却(しりぞ)けて以(もっ)て糞(つちか)う。天下(てんか)に道(みち)無(な)ければ、戎馬(じゅうば)、郊(こう)に生(しょう)ず。
天下に道の教えが実践されていれば、伝令用の早馬も戦場からは退けて畑仕事に役立てる。天下に道の教えが実践されないなら、馬は郊外の戦場で軍馬として用いられる。
- 走馬(そうば):急使の乗る馬。早打ちの馬。戦場の様子を伝える早馬。
- 却(しりぞ)けて:戦場から退けて
- 糞(つちか)う:耕作用につかう、畑仕事に役立てる
- 戎馬(じゅうば):戦争に用いる馬。軍馬。戦馬。
- 郊(こう):都市の周辺部。町外れ。郊外。
罪莫大於可欲、禍莫大於不知足、咎莫大於欲得。
罪(つみ)は可欲(かよく)より大(だい)なるは莫(な)く、禍(わざわい)は足(た)るを知(し)らざるより大(だい)なるは莫(な)く、咎(とがめ)は得(え)んと欲(ほっ)するより大(だい)なるは莫(な)し。
欲望におぼれるよりも大きな罪はなく、満足を知らないことより大きなわざわいはなく、得たいという欲求より大きなあやまちはない。
- 可欲(かよく):欲望におぼれること。強欲。
- 咎(とがめ):あやまち。罰されるべき行為。罪。
故知足之足、常足。
故(ゆえ)に足(た)るを知(し)って之(こ)れ足(た)れば、常(つね)に足(た)る。
だから満足することを知り、これで満足だと思えば、常に十分なのだ。

