
老子は、万物はみな陰陽を内包してそれを調和させている存在だと言います。だから人を思いやって譲れば失うようでいて周囲の支持や信頼を得ることができるし、自分ばかりが得をしたいと自分が得ることばかりに偏れば周囲からの信頼は失います。強引なものごとの進め方で良い結果を得ることはないことは昔からの教えであって、老子の教えの中でもそれは根本的で大切なものであると説いています。陰陽を和した偏りのない空っぽの心で無為自然でいることが道と共に生きる秘訣なのですね。
In Losing, One Gains; In Gaining, One Loses
Laozi teaches that all things contain both yin and yang within themselves and exist by harmonizing them. Therefore, showing consideration for others and yielding may appear to be a loss, yet it earns the support and trust of those around you. Conversely, when one becomes overly focused on personal gain and seeks only one’s own benefit, the trust of others is lost. Since ancient times, it has been taught that no good results come from advancing matters by force, and Laozi presents this as a fundamental and essential principle of his teachings. The secret to living in harmony with the Tao lies in maintaining a balanced, empty mind—free from bias—and embracing spontaneous, unforced action.
漢文と書き下し文・現代語訳
道生一、一生二、二生三、三生萬物。萬物負陰而抱陽。沖氣以爲和。
道(みち)一(いつ)を生(しょう)じ、一(いつ)二(に)を生(しょう)じ、二(に)三(さん)を生(しょう)じ、三(さん)万物(ばんぶつ)を生(しょう)ず。万物(ばんぶつ)陰(いん)を負(お)いて陽(よう)を抱(いだ)き、沖気(ちゅうき)を以(もっ)て和(わ)を為(な)す。
道から太極が生じ、太極から陰陽が生じ、陰陽から沖気が生じ、沖気から万物が生じた。万物は陰陽を内包しており、それが沖気によって調和している。
人之所惡、唯孤寡不轂、而王公以爲稱。故物或損之而益、或益之而損。
人(ひと)の悪(にく)む所(ところ)は、唯(ただ)孤(こ)・寡(か)・不轂(ふこく)のみ。而(しか)るに王公(おうこう)以(もっ)て称(しょう)と為(な)す。故(ゆえ)に物(もの)或(つね)に之(これ)を損(そん)して益(えき)し、或(つね)に之(これ)を益(えき)して損(そん)す。
人が避けたがる境遇は、孤(頼る人のない孤児)、寡(配偶者のいない独り者)、不轂(無収入となること)だ。しかし王侯は孤寡不轂を自称し、こうしたやるせない状況を自分事としている。このように物事は(他を思いやって譲り、自分は)失うことで実は(周囲からの支持や信頼を)得ており、(自分ばかりが得したい考えて)得たと思っていると実は(周囲からの信頼は)失う。
- 孤(こ):みなし児、孤児
- 寡(か):独り者、配偶者のいない人
- 不轂(ふこく):無収入の人
人之所教、我亦教之。強梁者不得其死。吾將以爲教父。
人(ひと)の教(おし)うる所(ところ)は、我(われ)も亦(また)之(これ)を教(おし)えん。強梁(きょうりょう)なる者(もの)は其(そ)の死(し)を得(え)ず、と。吾(われ)将(まさ)に以(もっ)て教父(きょうふ)と為(な)さんとす。
人が教えていることであるが、私もまたこのことを教える。強引で力づくな人は良い死に方をしない。私はこのことを私の教えの根本として大切にしたい。
- 強梁(きょうりょう)なる者(もの):強引にものごとを進める人。力づくの人。
- 教父(きょうふ):教えの根本

