
老子は、宇宙の根源である道について人格のりっぱな人が聞くと、すぐその原理原則に沿って生きることを実行しようとするけど、中くらいの人格の人だと半信半疑になり、興味のない人が聞くと馬鹿馬鹿しいと大笑いする、つまり、大笑いされるくらいでないと道の実践とは言えない、といいます。
道に従って、すぐれた徳を発揮して生きていると、世間一般の賢さとはずれるから、愚かな人のように見えたり、潔白なのにそうでないように見えたり、俗っぽく、悪く見えることもあるのだと。大きすぎる存在である道は、その全貌が私たちには見えないから、存在しないかのように感じられるけれど、ただ道だけが、万物に力を与えて成長させることができると説いています。
The Dao Is Too Vast to Be Seen
Laozi says that when a person of superior character hears of the Dao, the root of the universe, they immediately endeavor to live in accordance with its principles. Those of middling character, however, are half-believing and half-doubting, while those who are unreceptive hear of it and laugh it off as absurd. In other words, if it is not met with such laughter, it cannot truly be called the practice of the Dao.
He explains that those who live in accordance with the Dao and embody the highest virtue often diverge from the world’s conventional wisdom. As a result, they may appear foolish, seem impure despite being pure, or even look crude and morally suspect. Because the Dao is vast beyond measure, its full scope cannot be perceived, making it seem as though it does not exist. Yet it is the Dao alone that grants all things their power and allows them to grow.
漢文・書き下し文と現代語訳
上士聞道、勤而行之。中士聞道、若存若亡。下士聞道、大笑之。不笑、不足以爲道。
上士(じょうし)は道(みち)を聞(き)けば、勤(つと)めて之(これ)を行(おこ)ない、中士(ちゅうし)は道(みち)を聞(き)けば、存(そん)するが若(ごと)く亡(な)きが若(ごと)く、下士(かし)は道(みち)を聞(き)けば、大(だい)として之(これ)を笑(わら)う。笑(わら)わざれば、以(もっ)て道(みち)と為(な)すに足(た)らず。
人格の優れた人が道を聞くと、ただちにその教えを実践しようとする。中くらいの人が道を聞くと、それは存在するのか、しないのかと疑う。人格のできていない人が道を聞くとそんな馬鹿なと大笑いする。笑われるくらいでないと、道を実践しているとはいえない。
故建言有之。明道若昧、進道若退、夷道若纇、上德若俗、大白若辱、廣德若不足、建德若偸、質眞若渝。
故(ゆえ)に建言(けんげん)之(これ)有(あ)り。道(みち)に明(あき)らかなるものは昧(くら)きが若(ごと)く、道(みち)を進(すす)むものは退(しりぞ)くが若(ごと)く、夷道(いどう)は纇(るい)なるが若(ごと)く、上徳(じょうとく)は俗(ぞく)なるが若(ごと)く、大白(たいはく)は辱(じょく)せるが若(ごと)く、広徳(こうとく)は足(た)らざるが若(ごと)く、建徳(けんとく)は偸(こう)なるが若(ごと)く、質真(しっしん)は渝(ゆ)なるが若(ごと)し。
だから昔から言われていることがある。道を実践している人は愚か者のように見える。道に沿って進んでいる人は後退しているように見える。平らな道はでこぼこ道のようで、優れた徳は俗っぽく見え、清く潔白でもはずかしめを受けているように見え、広く徳を実践していても智慧が足りないように見え、健全な徳を実践していても何かずるいように見え、質実であるのに変わり身が早いように見える。
- 昧(くら)き:道理にくらい、おろか。
- 建言(けんげん):古人のことば。格言。
- 夷道(いどう):平な道
- 纇(るい):凸凹道
- 上徳(じょうとく):すぐれた徳、最上の徳
- 大白(たいはく):清く潔白なこと
- 辱(じょく):はずかしめ、恥
- 広徳(こうとく):広い徳
- 建徳(けんとく):健全な徳
- 偸(こう):まじめでない、ぬすむ
- 質真(しっしん):質実
- 渝(ゆ):変わる、変化する
大方無隅、大器晩成、大音希聲、大象無形。
大方(たいほう)には隅(ぐう)無(な)く、大器(たいき)は晩成(ばんせい)し、大音(だいおん)は声(こえ)希(な)く、大象(だいしょう)は形(かたち)無(な)し。
巨大な四角形は大きすぎてその四隅は見えない。器の大きい人はその実力を発揮するまでに時間がかかる。大きすぎる音は聞こえない。大きすぎる形は、何もないように見える。
- 大方(たいほう):大きな四角
道隱無名。夫唯道善貸且成。
道(みち)隠(かく)れて名(な)無(な)し。夫(そ)れ唯(ただ)道(みち)のみ善(よ)く貸(か)し且(か)つ成(な)す。
道は人の目からは隠れていて、名付けようがない。道だけが、万物に力を与えて成長させることができる。
- 貸(か)し:万物に力を与える

