
老子は、リーダーが人々を統括する方法として、命令して従わせる、ではなく、人間の本質を理解して活かすことを考えれば、人々の方からあなたの下で働きたいとやってきて、リーダーは自然に敬われるようになる、といいます。
全ての人は宇宙の根源である「道」から生まれ、切り出されたままの材木のような素朴な他にない味わいと計り知れない可能性を持っているので、これを割いて道具にすることを考えるのは限度を知るべきで、ありのままを活用することが自然と調和し、社会を整えるやり方なのだと。
道とは何か、言葉では言い表せないけれど、この世のものに例えるなら、谷間の水の流れが川になり、やがて合流して大河となり、全ての流れが海でひとつとなるようなもの。
Keeping the Uncarved, Letting People Thrive
Lao Tzu says that the way for a leader to guide people is not to issue orders and force obedience, but to understand and work with human nature, so that people are spontaniously drawn to join and respect you.
All people are born from the “Way,” the root of the universe, and possess an unspoiled, unique character and boundless potential—like a block of uncarved wood, with nothing yet taken away. Just as with uncarved wood, once you begin to cut it up and turn it into tools, you must know when to stop; using things in their natural form is what brings harmony with nature and order to society.
The Way is hard to express in words, but in this world it is like water flowing from mountain valleys into rivers, merging into great streams, and finally all gathering in the sea.
漢文・書き下し文と現代語訳
道常無名。樸雖小天下不敢臣。
道(みち)は常(つね)に名(な)無(な)し。樸(ぼく)は小(しょう)なりと雖(いえど)も天下(てんか)敢(あ)えて臣(しん)とせず。
宇宙の根源である「道」を言葉で言い表すことはできないが、例えばそれを切り出されたままの材木の自然な姿になぞらえるならば、材木は小さな存在に見えても、この世のものが従わせることができない大きな可能性を秘めている。
- 樸(ぼく):切り出されたままの材木。まだ何にも加工されていない、自然そのままの姿。
- 小(しょう)なり:小さく、役に立たないように見える
侯王若能守之、萬物將自賓。
侯王(こうおう)若(も)し能(よ)く之(これ)を守(まも)らば、万物(ばんぶつ)将(まさ)に自(おのず)から賓(ひん)せんとす。
支配者がもし、大自然・大宇宙の原理である「道」の在り方を守れば、天地の間のあらゆる存在がその下にやってきて敬い従うだろう。
- 侯王(こうおう):諸侯や王、政治的支配者
- 万物(ばんぶつ):天地のあらゆる存在
- 自(おのず)から賓(ひん)せん:自ら進んで従う、自らやってきて敬う
天地相合、以降甘露、民莫之令而自均。
天地(てんち)相(あい)合(がっ)して、以(もっ)て甘露(かんろ)を降(くだ)し、民(たみ)は之(これ)に令(れい)する莫(な)くして自(おのず)から均(ひと)し。
天と地は調和して自然界に恵みをもたらし、人々は命令されなくても社会は自然と整う。
- 甘露(かんろ):中国古来の伝説で、天子が仁政を施すと、天が感じて降らすという甘い露。「自然の恵み」を意味する比喩。
- 令(れい)する:言いつける。命ずる。言いつけ。お達し。
- 均(ひと)し:ひとしい、ととのえる、おさめる
始制有名。名亦既有、夫亦將知止。知止所以不殆。
始(はじ)めて制(さ)けて名(な)有(あ)り。名(な)も亦(また)既(すで)に有(あ)れば、夫(そ)れ亦(また)将(まさ)に止(とど)まるを知(し)らんとす。止(とど)まるを知(し)るは殆(あやう)からざる所以(ゆえん)なり。
材木を切って何か道具を作れば、名前がつく。名前がすでにあるものをさらに細分化してゆくことは、限界を知らなくてはならない。限界を知ることで、危険を避けることができる。
- 制(さ)けて:きる、たつ
譬道之在天下、猶川谷之與江海。
道(みち)の天下(てんか)に在(あ)るを譬(たとう)れば、猶(な)お川谷(せんこく)の江海(こうかい)に与(くみ)するがごとし。
宇宙の根源である「道」の在り方をこの世のものにたとえるのであれば、支流が大河と合流し、やがてすべての流れが海でひとつになるようなものだ。
- 川谷(せんこく):川や谷間を流れる水。小川や支流。
- 江海(こうかい):「江」は大河、「海」は海洋
- 与(くみ)する:仲間になる、くみする、ともにする

