論語【八佾第三】48. 礼は人を完成させる

弟子の子夏が孔子先生に美人画について質問しています。口元、目元を描いた後に、おしろいで完成させるとはどのような意味ですか、と。孔子先生は、絵画は白で完成させるんだよ、と答えます。それに対して子夏が、りっぱな人の人格が礼をもって完成するようなものですね、というと、孔子先生は喜んで、お前とは一緒に詩の話ができる、とおっしゃいました。

芸術論と礼を混然一体に話しているのが面白いですね。

書き下し文

子夏(しか)問(と)いて曰(いわ)く、巧笑(こうしょう)倩(せん)たり、美目(びもく)盼(へん)たり、素(そ)以(もっ)て絢(あや)を為(な)すとは、何(なん)の謂(いい)ぞやと。子(し)曰(いわ)く、絵事(かいじ)は素(そ)を後(のち)にすと。曰(いわ)く、礼(れい)は後(のち)なるかと。子(し)曰(いわ)く、予(われ)を起(おこ)す者(もの)なり。商(しょう)や始(はじ)めて与(とも)に詩(し)を言(い)う可(べ)きのみと。

現代語訳

弟子の子夏がこのように質問した。「笑うと口元が可愛らしく、目元に美しい表情がある。おしろいで美しさを完成させる」とはどういう意味でしょうか。孔子先生は、「絵を描くときは白を最後にするんだよ」と答えた。すると子夏は「りっぱな人が礼で完成されるようなことでしょうか」と問うた。孔子先生は、「おまえは、私に気づかせてくれる。おまえとは、詩を語り合えるね。」とおっしゃった。

解説

  • 子夏(しか):孔子の弟子で、孔門十哲のひとり。文章・学問に優れていた。孔子より四十四歳年少。子夏は字で、商は名前。字で呼ぶのは礼儀正しく、名前で呼ぶのは親しみがこもっている。
  • 巧笑(こうしょう)倩(せん)たり:愛らしく笑うと口元が可愛らしい
  • 美目(びもく)盼(へん)たり:目元が美しく、黒目と白目の境界がはっきりしている。
  • 素(そ):おしろい
  • 絢(あや)を為(な)す:美しさを完成させる
  • 起(おこ)す:啓発する