論語【泰伯第八】191. 信頼すべき人間の条件

曾先生が、どんな人間を信じたらいいのか、その基準をお話されています。若くして先代を失った小国の君主を任すことができる人。またその国の命運を託すことができる人。そして国の重大事にあたっても常の冷静さと志を失うことなく泰然自若としている人物。

現代に置き換えて言うと、三歳とか五歳の子がいるとして、自分が親だったら死ぬとき誰に託すのか。中小企業の経営を任せることができて、何か事があっても泰然自若としている人。それはどんな人なのか考えて、自分もそうなろうとする。

The Conditions for Trust
Master Zeng discusses the criteria for whom to place trust in. Someone to whom one could entrust a small kingdom whose young ruler lost their predecessor early. Someone worthy of having the nation’s fate placed in their hands. And someone who remains calm and composed, never losing their resolve, even when facing the nation’s most critical matters.

Translated to modern terms: Imagine you have a child aged three or five. If you were the parent, whom would you entrust with your child when you die? Someone you could entrust with running a small or medium-sized business, someone who remains unflappable no matter what happens. Think about what kind of person that is, and strive to become that person yourself.

漢文と書き下し文

曾子曰、可以託六尺之孤、可以寄百里之命。臨大節而不可奪也。君子人與、君子人也。
曾子(そうし)曰(いわ)く、以(もっ)て六尺(りくせき)の孤(こ)を託(たく)す可(べ)く、以(もっ)て百里(ひゃくり)の命(めい)を寄(よ)す可(べ)く、大節(たいせつ)に臨(のぞ)みて奪(うば)う可(べ)からざるや、君子人(くんしじん)か、君子人(くんしじん)なり。

現代語訳

曾先生はこのようにおっしゃった。若くして先代に先立たれた若き君主を託すことのできる人、小国の命運を任せることのできる人、国家の重大事において冷静さを失うことなく泰然自若としている人を、りっぱな人といえるであろうか。りっぱな人といえる。

解説

  • 六尺(りくせき)の孤(こ):未成年の孤児のこと。または、まだ幼い時に父王と死別して即位した君主のこと。「六尺」は一・四メートルで十四、五歳の身長のこと。また、一尺を二歳半と考えて、十五歳とする説もある。「孤」は孤児のこと。
  • 百里(ひゃくり)の命(めい):一つの国の政治、運命のこと。「百里」は四方が百里の範囲のことで、天子から委任された諸侯の国の領土のことをいう。「命」は制令のことで、一国の運命のこと。なお一里は約400~500メートル(日本の里は約4kmだが、中国は異なる)で、百里四方の国家とは小国、一地方国家あるいは邑(むら)のこと。
  • 大節(たいせつ):国家の存亡にかかわる重大事。
  • 奪(うば)う可(べ)からざる:(その人の節操や志を)奪い去ることができない。自分を失うことなく、泰然自若としている。
  • 君子人(くんしじん):君子らしい人物