論語【泰伯第八】188. 身体を大切にして幸せに生きる

孔子先生の高弟である曾子は、自らの病が重く最期が近いと感じると、弟子たちを呼び集めて、私の手足に傷などないか調べてくれ、とおっしゃいました。

さらに、詩経を引用され、人が生きるということは、深い淵が目の前にあるかのように、そしてまた薄氷を踏むかのように、いつも懼れ慎んで注意に注意を重ねなければならないことをお話されました。

そしてご自身はそのような注意を重ね、その結果として親からいただいた大切な身体を五体満足の状態で死期を迎えた今、もう自分は不注意によって大切な身体を傷つける心配もなくなるのだなあ、そうだろう、君たち、と弟子たちに語りかけました。

お父さんお母さんからいただいた大切な身体を傷つけることなく幸せに生きることが最大の親孝行なんですね。

Cherishing the Body, Living Happily
When Zengzi, a distinguished disciple of Confucius, sensed that his illness had grown grave and that death was near, he summoned his disciples and said, “Examine my hands and feet—see whether there are any injuries.”

He then cited the Book of Songs, explaining that to live is to stand as if before a deep abyss, or to walk as if upon thin ice: one must constantly remain vigilant, reverent, and cautious, exercising the utmost care.

He continued, addressing his disciples: “By living with such care, I now approach death with the body my parents gave me still whole and unharmed. I need no longer worry that through carelessness I might damage this precious gift. Is it not so, my students?”

To live a happy life without harming the body given to us by our parents—this is the highest form of filial piety.

漢文と書き下し文

曾子有疾。召門弟子曰、啓予足、啓予手。詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。而今而後、吾知免夫、小子。
曾子(そうし)疾(やまい)有(あ)り、門弟子(もんていし)を召(め)して曰(いわ)く、予(わ)が足(あし)を啓(ひら)け、予(わ)が手(て)を啓(ひら)け。詩(し)に云(い)う、戦戦兢兢(せんせんきょうきょう)として、深淵(しんえん)に臨(のぞ)むが如(ごと)く、薄冰(はくひょう)を履(ふ)むが如(ごと)しと。而今而後(じこんじご)、吾(われ)免(まぬか)るるを知(し)るかな。小子(しょうし)と。

現代語訳

曾先生の病は重く、弟子たちを呼び集めてこのようにおっしゃった。私の手足に悪いところはないか調べてくれ。詩経に、(人が生きてゆくということは)おそれつつしみ、目の前に深い淵があるかのように、また薄い氷の上を歩くかのように、とある。これより以降は、私は(親からいただいた身体を傷つけはしないかという心配から)免れるのだなあ。そうだろう、諸君。

解説

  • 曾子(そうし):曾子(そうし):孔子より46歳若い、主要な弟子のひとり。曾子の弟子に孔子の孫の子思(しし)が、その子思の弟子に孟子がいた。孝の道(親孝行)に優れており『孝経』『大学』の著者。曾は姓、子は先生に対する敬称。
  • 疾(やまい)有(あ)り:病気で危篤であった
  • 門弟子(もんていし):弟子
  • 予(わ)が足(あし)を啓(ひら)け、予(わ)が手(て)を啓(ひら)け:私の手足にどこか悪いところがないか調べてくれ
  • 啓(ひら)く:あけ開く。(ふとんをあける)
  • 戦戦兢兢(せんせんきょうきょう)として:おそれつつしんで
  • 臨(のぞ)む:目の前にする
  • 而今而後(じこんじご):これより以降は
  • 吾(われ)免(まぬか)るるを知(し)るかな:私は(親からいただいた身体を傷つけはしないかという心配から)免れるのだなあ
  • 小子(しょうし):師が弟子をよぶ語。諸君、君たち。