論語【述而第七】173. 心と金銭物質を連動させない

孔子先生は、この頃は、聖人といえるほど立派な人はいなくなったけど、君子といえるような人に会うことができれば満足だ、とおっしゃいます。また、善人といえるほどの人はいないけれども、心の安定した人に会うことができればそれでよい、とも。

心を安定させておくことはなかなか難しくて、お金が無いとか年をとって余命がわずかになってきたとか、無くなるものを嘆くのではない泰然とした心の平穏は、なかなか得難いとおっしゃいます。無くなるものばかりを見つめて心の余裕をなくすことなく、泰然とする気概が重要なんですね。

Do not Let Your Heart Be Tied to Money or Material Things
Master Confucius remarked that although in his day there were no longer people worthy of being called sages, he would be content if he could meet someone who deserved to be called a gentleman. He also said that while truly good people were nowhere to be found, it would suffice to encounter someone whose mind remained steady.

Yet, he noted, keeping one’s heart steady is no easy task. The unshaken tranquility that does not lament things that inevitably fade—be it the lack of wealth or the awareness, with aging, that one’s remaining years are few—is difficult to attain. What matters is the resolve to stay composed, without losing your inner spaciousness by dwelling only on what is slipping away.

漢文と書き下し文

子曰、聖人吾不得而見之矣。得見君子者、斯可矣。子曰、善人吾不得而見之矣。得見有恆者、斯可矣。亡而爲有、虚而爲盈、約而爲泰。難乎有恆矣。
子(し)曰(いわ)く、聖人(せいじん)は吾(われ)得(え)て之(これ)を見(み)ず。君子者(くんししゃ)を見(み)ることを得(え)ば、斯ここに可かなり。子(し)曰(いわ)く、善人(ぜんにん)は吾(われ)得(え)て之(これ)を見(み)ず。恒(つね)有(あ)る者(もの)を見(み)ることを得(え)ば、斯(ここ)に可(か)なり。亡(な)くして有(あ)りと為(な)し、虚(むな)しくして盈(み)てりと為(な)し、約(やく)にして泰(たい)なりと為(な)す。難(かた)いかな恒(つね)有(あ)ること。

現代語訳

孔子先生はこのようにおっしゃった。「聖人といえるような立派な人を見ることはなくなったが、君子といえる人格者がいれば、それでよい。」またこのようにもおっしゃった。「善人を見ることはなくなったが、安定した道徳心を持っている人がいれば、それでよい。無いものをあるように振舞い、空なのに充実して見せ、困窮しているのに余裕があるように見せる。心を安定させておくことは難しい。」

解説

  • 恒(つね)有(あ)る者(もの):恒に変わらず正しい心を持っている人、安定した道徳心を持っている人
  • 亡(な)くして有(あ)りと為(な)し:なくてもあるように振舞う
  • 虚(むな)しくして盈(み)てりと為(な)し:空なのに充実しているように見せる
  • 約(やく)にして泰(たい)なりと為(な)す:困っていて、苦しいいのに余裕があって楽なように見せる