大学【第一段 第一節】 人生は他に尽くす徳から始まる

大学は、日本においては江戸時代に小学校(寺子屋)の教科書として使われた、中国古典の「四書(ししょ)」のひとつで、二宮金次郎の銅像が持っているのも、「大学」であると言われています。

大学は冒頭で、「明徳を明らかにすること」が人生の要点だよ、と教えています。「徳」とは、人間が天から授かって本来持っている善なる性質を発揮することで、「自己の最善を他に尽くす」ことです。自分の内なる善を明らかなものとして発見し、それを行動においても明らかに発揮しなさい、という感じでしょうか。それができれば、周囲の人と「ありがとう」の人間関係をたくさん築くことができ、すると「善」とはどんなものかが分かって、そこに留まることができます。

人生の要点が分かっていれば心が安定し、すると思考も明晰となりますから、様々な利益を得ることができるようになります。「利益を得たい」から始めるのは順番が逆なので間違いだよ、ものには順番があるよ、と教えています。
小学校の教育がここから始まるとは、迫力がありますね。

大学 第一段 第一節 漢文と書き下し文

大學之道、在明明徳、在親民、在止於至善
知止而后有定、定而后能靜、靜而后能安、安而后能慮、慮而后能得。
物有本末、事有終始。知所先後、則近道矣。

大学(だいがく)の道(みち)は、明徳(めいとく)を明(あきら)かにするに在(あ)り。民(たみ)に親(した)しむに在(あ)り。至善(しぜん)に止(とど)まるに在(あ)り。
止(とど)まるを知(し)りて后(のち)定(さだ)まる有(あ)り。定(さだ)まりて后(のち)能(よ)く静(しず)かなり。静(しず)かにして后(のち)能(よ)く安(やす)し。安(やす)くして后(のち)能(よ)く慮(おもんぱか)る。慮(おもんぱか)りて后(のち)能(よ)く得(う)。
物(もの)に本末(ほんまつ)有(あ)り、事(こと)に終始(しゅうし)有(あ)り。先後(せんご)する所(ところ)を知(し)れば、則(すなわ)ち道(みち)に近(ちか)し。

現代語訳

大人(たいじん・りっぱな人)の学びの道は、人として天から授かった徳を明らかにすることだ。人々に親しむことだ。最高の善にとどまることだ。

とどまるべきところを知れば志が定まる。志が定まると心が静かになる。心が静かであれば安らかである。安らかであればよく考えることができる。よく考えればよく得ることができるようになる。

ものごとには順序があり、始めと終わりがある。先にすることと後にすることを知れば、道理を習得したということになる。

解説

  • 徳とは自己の最善を他に尽くすこと。
  • 明徳を明らかにする」は、人生の要点。
    自分はひとりで他はみんな他人だから、他人を優先して生きる。自分のことだけ考えていてはひとりになる。何でもまごころをこめてすれば、当たらずとも遠からずとなるから、自然とそうできる人間になることを目指す。そうすれば「民に親しむ」=多くの人と親愛の関係になれる。
  • 至善(しぜん)に止(とど)まる」は、一回、多くの人と親愛の関係になれるいい場所に行くと、これしかない、と目標が明らかになる。明徳が目標になれば、右往左往しないで冷静になって安定感をもって見回すと、物事がよく見えるようになる。すると、全てのものが得られるようになる。
  • 慮(おもんぱか)る:他者を思いやる、思慮を深める
  • 人間の人生は全て「得たい」ということだけど、「得よう」から始めてもダメで、明徳から始める。
  • 「明徳を明らかにする」、「民に親しむ」、「至善に止まる」は、大学の三綱領。