論語【子罕第九】211. 天命に生きる揺るぎなさ

孔子先生が命の危険に遭遇されたときに言われたことば。

私は周の文王の伝統の継承者であり、私に継承させたということは、天はこの伝統を滅ぼそうとはしていない。そうであるなら、私を襲う者がいたとしても、私に何ができよう。

先生は伝統の継承者としての使命、天命に生きていたことが分かる章句です。

Unshaken in the Mandate of Heaven
Words spoken by Confucius when his life was in danger.

I am the one who carries on the tradition of King Wen of Zhou. Since Heaven has made me carry it on, Heaven does not intend to destroy this tradition. If that is so, even if someone attacks me, what can they do to me?

This is a passage that shows the Master lived by his mission as the successor to the tradition—his heavenly mandate.

漢文と書き下し文

子畏於匡。曰、文王旣沒、文不在茲乎。天之將喪斯文也、後死者、不得與於斯文也。天之未喪斯文也、匡人其如予何。
子(し)、匡(きょう)に畏(い)す。曰(いわ)く、文王(ぶんおう)既(すで)に没(ぼっ)し、文(ぶん)茲(ここ)に在(あ)らざらんや。天(てん)の将(まさ)に斯(こ)の文(ぶん)を喪(ほろ)ぼさんとするや、後死(こうし)の者(もの)、斯(こ)の文(ぶん)に与(あず)かるを得(え)ざるなり。天(てん)の未(いま)だ斯(こ)の文(ぶん)を喪(ほろ)ぼさざるや、匡人(きょうひと)其(そ)れ予(われ)を如何(いかん)せん。

現代語訳

孔子先生は、隣国である衛の匡において、生命の危機に遭った。そして言われた。文王は既に亡くなったが、文王の残された伝統はここにまだあるではないか。天がもし、この伝統を滅ぼそうとしているのであれば、私にはこの伝統を継承することはできなかったはずだ。天がこの伝統を滅ぼそうとしていないのであれば、匡の人が私に対して何ができるというのか。

解説

  • 匡(きょう):衛の国の地名
  • 畏(い)す:生命の危機に遭う。(魯の政治家である陽虎に孔子の容貌が似ていたため、陽虎をうらむ人たちに孔子は誤って捕らえられた。)
  • 文王(ぶんおう):孔子が尊敬した周王朝の聖人
  • 文(ぶん):教養・学問・伝統
  • 後死(こうし)の者(もの):文王より後で死ぬ者。孔子のこと。(孔子は自分が文王の後継者であるという自負がある。)