論語【泰伯第八】205. 民の命を守るリーダーの忍耐こそ至徳

中国古代の殷王朝(BC1600-BC1046)末期、暴虐な紂王による悪政が行われていました。周の文王やその息子の武王は優秀な人材を集めて領土の三分の二を有していたのにもかかわらず、一諸侯として殷王朝に仕えていました。戦争になれば国民が犠牲になるという親心が文王・武王にはあり、短期決戦できるときを待ってその時代を耐えました。孔子先生はこれは大変な徳であると評価されています。リーダーは自分を二の次にして多くの国民のことを思いやる必要があるのですね。

The Highest Virtue Is a Leader’s Patience in Protecting Lives
During the late period of the ancient Chinese Shang Dynasty (1600 BC–1046 BC), the tyrannical King Zhou ruled with brutal governance. King Wen of Zhou and his son King Wu, though they had gathered many capable talents and possessed two-thirds of the territory, continued to serve the Shang Dynasty as vassal lords.

King Wen and King Wu were deeply concerned that war would bring suffering to their people, so they endured those times and waited for the opportunity to wage a swift and decisive battle. Confucius praised this as a great virtue.

A leader must place themselves second and put the welfare of their people first.

漢文と書き下し文

舜有臣五人、而天下治。武王曰、予有亂臣十人。孔子曰、才難。不其然乎。唐虞之際、於斯爲盛。有婦人焉、九人而已。三分天下有其二、以服事殷。周之德、可謂至德也已矣。

舜(しゅん)に臣(しん)五人(にん)有ありて、天下(てんか)治(おさ)まる。武王(ぶおう)曰(いわ)く、予(われ)に乱臣(らんしん)十人(じゅうにん)有(あ)りと。孔子(こうし)曰(いわ)く、才(さい)難(かた)しと。其(そ)れ然(しか)らずや。唐虞(とうぐ)の際(さい)は、斯(これ)より盛(さかん)なりと為(な)す。婦人(ふじん)有(あ)り、九人(くにん)のみ。天下(てんか)を三分(さんぶん)して其(そ)の二(に)を有(たも)ち、以(もっ)て殷(いん)に服事(ふくじ)す。周(しゅう)の徳(とく)は、其(そ)れ至徳(しとく)と謂(い)う可(べ)きのみ。

現代語訳

古代の聖王舜には賢臣が五人いて、天下が治まっていた。周王朝を建国した武王は私には天下をよく治める賢臣が十人いると言った。孔子先生は、このようにおっしゃった。人材は得難い。まったくその通りだ。堯・舜の時代以降、周は人材に富んだ。十人の賢臣のうち、ひとり女性がいたので、残りの九人だけが男性であった。(そうしたすぐれた人材を有する周は)天下の領土の三分の二を有していたが、それでも一諸侯として殷に服従して仕えていた。(主君である殷の紂王の悪政に耐えた)周には大変な徳がある。

解説

  • 舜(しゅん):「書経」に登場する聖王。舜は最初の聖王である堯(ぎょう)から禅譲を受け、舜から禹に禅譲を行った。堯、舜は実在の人物かは判然としない。禹が建国した夏王朝(BC2070-BC1600)は中国最古の王朝と考えられている。参考:中国の歴史
  • 臣(しん)五人(にん)有ありて:賢臣が五人いて
  • 武王(ぶおう):殷の紂王を滅ぼして周王朝(BC1046-BC770)を建国した。文王の子。周公の兄。
  • 乱臣(らんしん):天下をよく治める賢臣(「乱」には治める意味がある)
  • 才(さい)難(かた)し:人材を集めるのは難しい、人材は得難い
  • 唐虞(とうぐ)の際(さい)は:堯・舜の時代以降は
  • 天下(てんか)を三分(さんぶん)して其(そ)の二(に)を有(たも)ち:周の領土は天下の三分の二であった。それでも周は一大名として殷に仕えていた。戦争になれば国民が犠牲になると文王・武王は親心があった。短期決戦できるときを待ってその時代を耐えた。それは大変な徳=至徳。
  • 殷(いん)に服事(ふくじ)す:殷に服従して仕えていた
  • 至徳(しとく):最上の徳