論語【泰伯第八】204. 聖王の天意による治世

孔子先生が「書経」に登場する一番最初の聖王である堯帝のことをお話されています。堯帝は今から四千年以上前の伝説の古代の聖王です。その治世は、ただ天のみを仰ぎ見て、ただひたすら天意に順うことで偉大な事業を成し遂げ、すぐれた制度や文化を実現したといいます。

陰と陽のバランスが変化することで自然界では四季がめぐるように、その自然の理法、天の道のダイナミクスを人間社会に降ろしてくるのが古代の聖王の役割だったのですね。

The Sage King’s Rule in Accordance with Heaven’s Will
Confucius speaks of Emperor Yao, the earliest sage king described in the Book of Documents. Emperor Yao is a legendary ancient sage king from more than four thousand years ago. It is said that during his reign, by looking solely to Heaven and devoting himself to following Heaven’s will, he accomplished great undertakings and established outstanding institutions and culture.

Just as the changing balance of yin and yang brings about the cycle of the four seasons in the natural world, the role of the ancient sage kings was to manifest the principles of nature—the workings of Heaven’s Way—within human society.

漢文と書き下し文

子曰、大哉、堯之爲君也。巍巍乎、唯天爲大。唯堯則之。蕩蕩乎、民無能名焉。巍巍乎、其有成功也。煥乎、其有文章。
子(し)曰(いわ)く、大(だい)なるかな、堯(ぎょう)の君(きみ)たるや。巍巍乎(ぎぎこ)として、唯(ただ)天(てん)を大(だい)なりと為(な)す。唯(ただ)堯(ぎょう)之(これ)に則(のっと)る。蕩蕩乎(とうとうこ)として、民(たみ)能(よ)く名(な)づくる無(な)し。巍巍乎(ぎぎこ)として、其(そ)れ成功(せいこう)有(あ)り。煥乎(かんこ)として、其(そ)れ文章(ぶんしょう)有(あ)り。

現代語訳

孔子先生はこのようにおっしゃった。古代の聖王、堯は偉大であるなあ。ただ天のみを仰ぎ見て、ただ天意のみにのっとって治世をされた。その広大無辺であること、人々はどう言葉で表現してよいのか分からない。成し遂げた事業は偉大で、制度や文化は光り輝いている。

解説

  • 大(だい)なるかな:偉大だなあ
  • 堯(ぎょう):「書経」に登場する最初の聖王。舜(しゅん)に王位を禅譲し、舜は禹に位を禅譲した。堯、舜が実在の人物かは判然としない。禹が建国した夏王朝(BC2070-BC1600)は中国最古の王朝と考えられている。参考:中国の歴史
  • 巍巍乎(ぎぎこ):高大雄偉(勇壮で偉大であること)のさま。徳の高く尊いさま。
  • 唯(ただ)天(てん)を大(だい)なりと為(な)す:ただ天だけを偉大なものとした
  • 唯(ただ)堯(ぎょう)之(これ)に則(のっと)る:堯はひたすら天意に沿う治世をした
  • 蕩蕩乎(とうとうこ):広くのびやか、広大ではてしない
  • 民(たみ)能(よ)く名(な)づくる無(な)し:人々はこれを何と表現してよいのか分からない
  • 成功(せいこう)有(あ)り:自己を高めることを成し遂げた、成し遂げた事業がある
  • 煥乎(かんこ):りっぱに光輝くさま
  • 文章(ぶんしょう):制度文物のすぐれていること。制度や文化。民の守るべき礼のきまりなど。