
老子は、何かを縮めようとするならまず引っ張って伸ばし、弱くするならまず強め、やめたいことはまずさかんにし、奪いたいならまず与えなさいと言います。これが道の陰陽の働きで、ある力を加えると、必ず反対の力が働く性質があることを言っています。さらに、「柔弱は剛強に勝つ」といいます。弱いものが強いものに勝つとは矛盾するようですが、例えば固い木の枝は力を加えればポッキリ折れてしまいますが、柔らかい柳の枝はしなって折れず、さらに元の形への復元力があります。このような道の原則を国家も免れませんから、国を統治するときに軍事力などの国家権力を誇示するようなことはやめなさいと教えています。「戦わずして勝つ」老子の考え方は、孫子の兵法にも影響を与えました。
The Dynamics of Yin and Yang
Laozi teaches that to shrink something, one must first stretch it; to weaken it, first strengthen it; to halt it, first let it flourish; to take from it, first give to it. This reflects the interplay of yin and yang within the Way: whenever one force arises, its opposite inevitably responds.
He also says, “The soft and yielding overcome the hard and unyielding.” It may seem paradoxical that the weak prevail over the strong, yet consider this: a rigid tree branch snaps when bent, while a supple willow branch bends without breaking and springs back into shape.
Even nations are subject to this principle of the Dao. Thus, in governing a country, one should avoid flaunting power—especially military might. Laozi’s notion of winning without fighting later influenced Sun Tzu’s Art of War.
將欲歙之、必固張之。
之(これ)を歙(ちぢ)めんと将欲(しょうよく)せば、必(かなら)ず固(しば)らく之(これ)を張(は)る。
何かを縮めようとするのであれば、必ずまずそれを引っ張って伸ばしておく。
- 歙(ちぢ)めん:縮める
- 固(しば)らく:縮めたいなら、まず伸ばしておく、というように反転が起こる前にしばらくその反対の状態を保つ、という時間的な意味。
將欲弱之、必固強之。
之(これ)を弱(よわ)めんと将欲(しょうよく)せば、必(かなら)ず固(しばら)く之(これ)を強(つよ)くす。
何かを弱くしようとするのであれば、必ずまずこれを強める。
將欲廢之、必固興之。
之(これ)を廃(はい)せんと将欲(しょうよく)せば、必(かなら)ず固(しばら)く之(これ)を興(おこ)す。
何かを廃止しようとするのであれば、必ずまずこれを盛んにする。
將欲奪之、必固與之。
之(これ)を奪(うば)わんと将欲(しょうよく)せば、必(かなら)ず固(しば)らく之(これ)に与(あた)う。
何かを奪おうとするのであれば、必ずまず与える。
是謂微明。柔弱勝剛強。
是(これ)を微明(びめい)と謂(い)う。柔弱(じゅうじゃく)は剛強(ごうきょう)に勝(か)つ。
これを微(かす)かだが明らかな智慧という。弱く柔らかいものは強い力に勝つ。
魚不可脱於淵、國之利器、不可以示人。
魚(うお)は淵(ふち)より脱(だっ)す可(べ)からず。国(くに)の利器(りき)は、以(もっ)て人(ひと)に示(しめ)す可(べ)からず。
魚は水から出ては生きてゆくことができない。(それと同様に、治世も柔弱が剛強に勝つ道の働きを免れないから)国は国家権力を誇示すべきでない。
- 淵(ふち):水を深くたたえているところ
- 利器(りき):鋭利な刃物。鋭い武器。権力の象徴。


