
天沢履は剛強な乾の卦の下に柔弱な兌の卦がいる形で、偉大な人や大いなる事業の後を柔弱な人がついて従ってゆく道を説いています。これは虎の後をついてゆくように危険で困難なことですが、乾の卦の剛強な徳と兌の卦の和らぎ悦ぶ徳によって、虎に食われてしまうことなくついに困難な事業は達成されます。
兌の卦の和らぎ悦ぶ徳は困難で危険な難局に処してゆく上で重要で、いかなる困難失敗にあってもへこたれることなく、憂いに沈み悲しみに沈むことなく、常に和平な悦び楽しみの気分を持っていることによって、大事業ができるのです。
Heaven over Lake is the hexagram formed with the strong, unyielding trigram Heaven above, and the soft, yielding trigram Lake below. It describes the way in which a gentle or weaker person follows in the footsteps of a great person or pursues a great undertaking. This path is as dangerous and difficult as walking behind a tiger; however, thanks to the strong virtue of Heaven and the harmonious, joyful virtue of Lake, the follower is not devoured by the tiger, and the difficult enterprise is ultimately accomplished.
The harmonious and joyful virtue of Lake is crucial for navigating perilous and challenging circumstances. No matter what difficulties or failures arise, one must neither lose heart nor sink into worry or grief. By always maintaining a peaceful, joyful, and cheerful disposition, it becomes possible to accomplish great works.
彖(たん)の辞
履虎尾。不咥人。亨。 虎(とら)の尾(お)を履(ふ)む。人(ひと)を咥(くら)はず。亨(とお)る。
読書メモ
- 履とは、事を履み行うこと。この卦は、事を履み行うについての道を説く。
- 上に純陽なる乾の卦、下に陰柔なる兌の卦がある。下の柔弱な兌の卦が、上の豪強な乾の卦の後を履んで、その後からついてゆく卦。小さいものが大きいもののあとを履んでついて行く道を説くのがこの卦の趣意。
- 小さいものが大きいもののあとからついて行くことは困難で、「虎(とら)の尾(お)を履(ふ)む」とあるように、虎の後をついてゆくような危険なこと。
- 人事に例えると、小さい柔弱なる人が大きい剛強な人に仕えること、才能の乏しい人が才能の多い人に仕えるこ、臣下が君に仕えること。なかなか仕える人のお気に入らず、困難なことがしばしばあり、いつ逆鱗に触れるか分からない。あるいは、人がある大きい事業の後を履んでそれに従ってゆくこと。
- 兌の卦は和らぎ悦ぶ卦。乾の卦は剛健なる卦。この二つの徳によって、小さいものが大きい人または大きい事のあとに随ってついて行くことができる。
- 兌の卦の和らぎ悦ぶ徳によって、困難にして危険な難局に処してゆくことができる。いかなる困難失敗にあってもへこたれることなく、憂いに沈み悲しみに沈むことなく、常に和平なる悦び楽しみの気分を持っている。それによって、大事業ができる。
彖の辞の解説
- 「虎の尾を履む」は虎の後からついてゆくような大層困難で危険で恐るべきこと。
- 書経の君牙篇に、文王・武王・成王・昭王の後を継ぐ穆(ぼく)王の言葉で「心の憂え危ぶむこと虎の尾を踏み春の氷を渉るが若し」とある。天子の位にいる重大事を自分の心は憂え危ぶんでおり、たとえば虎の尾を踏むがごとくであり、春に溶けかかった氷の上を渉ろうとするがごとくだ、という意味。
- 虎の尾を踏んで行く人が、その虎に食われることなく、自分の志すところが亨(とお)り行われる。
- この卦には兌の卦の和らぎ悦ぶ徳と、乾の卦の剛健なる徳が備わっているために、虎の餌食となる難を免れるように困難を克服し、危険を逃れて恐るべき地位に安んじておられ、その志は大いに行われる。

