
この章句の現代語訳を考えていますと、ビートルズの “Across the Universe” が頭の中に鳴り響いてきました。
“Across the Universe” は、「言葉は、紙コップの中に降りしきる雨のようにあふれ出して宇宙をただよう」と始まり、「ジャイグルデイヴァオーム」という謎の言葉が続きます。サンスクリット語で、直訳すると「暗闇を排除する輝けるものに栄光を (glory to the shining remover of darkness)」という意味だそうですが、さらに広義に「覚醒と精神探求の自由をもたらした大いなるものへの賛辞 (a way of paying tribute to a divine entity that brought them enlightenment and freedom to explore their spiritual selves) 」ととらえられることもあるようです。
この章句も、老子の内的探究を経た「宇宙の根源である道への賛辞」であると感じます。
ビートルズの”Across the Universe”は、その後、”Nothing’s gonna change my world.”「誰も私の世界を変えることができない」がリフレインで何度も何度も繰り返されます。
老子も、「道」を自らの精神を通じて確信していること感じる章句です。
漢文と書き下し文
孔德之容、唯道是從。道之爲物、唯怳唯忽。忽兮怳兮、其中有像。怳兮忽兮、其中有物。窈兮冥兮、其中有精。其精甚眞、其中有信。自古及今、其名不去。以閲衆甫。吾何以知衆甫之然哉。以此。
孔徳(こうとく)の容(よう)は、唯(ただ)道(みち)に是(こ)れ従(したが)う。道(みち)の物(もの)たる、唯(ただ)怳(こう)唯(ただ)忽(こつ)。忽(こつ)たり怳(こう)たり、其(そ)の中(うち)像(ぞう)有(あ)り。怳(こう)たり忽(こつ)たり、其(そ)の中(うち)物(もの)有(あ)り。窈(よう)たり冥(めい)たり、其(そ)の中(うち)精(せい)有(あ)り。其(そ)の精(せい)甚(はなは)だ真(しん)にして其(そ)の中(うち)信(しん)有(あ)り。古(いにしえ)より今(いま)に及(およ)ぶまで、其(そ)の名(な)去(さ)らず。以(もっ)て衆甫(しゅうほ)を閲(す)ぶ。吾(われ)何(なに)を以(もっ)て衆甫(しゅうほ)の然(しか)るを知(し)るや。此(ここ)を以(もっ)てなり。
現代語訳
大いなる徳は、ただ宇宙の根源である道にしたがう。道を物としてとらえれば、ぼんやりとして見定められない。ぼんやりとしているのだが、そこに何か形がある。ぼんやりとしているのだが、そこに何か物がある。奥深くで暗く、見えにくいのだが、そこに何か純粋なものがある。その純粋さにはまじりけがなく、信頼感を持つことができる。太古の昔から今まで、道という名が失われることはなかった。このように道は、宇宙と万物をつくりだした。私はどのように道が天地を創造したと分かるのか。このように知ることができる。
解説
- 孔徳(こうとく):大きな徳。大徳。
- 容(よう):中身、内容。あるいは、すがた、かたち、ようす
- 唯(ただ)怳(こう)唯(ただ)忽(こつ):ほんやりとしている、見定められない
- 像(ぞう):かたち
- 窈(よう)たり冥(めい)たり:奥深くて暗く、見えにくいさま
- 精(せい):まじりけのないもの。純粋なもの。すぐれたもの。
- 真(しん):まじりけがない
- 衆甫(しゅうほ):物事のはじまり
- 閲(す)ぶ:統べる、統率する、支配する

